ライフスタイルホテルの先駆け!エースホテル京都総支配人が語る“多様性”とは

2020年6月、京都に開業した「エースホテル京都」。開業前から注目を集めていたアジア初進出となる「エースホテル」は、ライフスタイルホテルの先駆けとも言われています。

今回、GM(総支配人)ニコラス氏(Nicolas James Black/通称:Nico)と、HafH共同創業者大瀬良亮の対談取材が実現。ホテルに対してはもちろん、GMの立場からアプローチする環境への想いなどを語っていただきました!

各国で暮らした旅好きのGM 
仕事の転機となった最大のチャンスはエースホテル京都の総支配人への抜擢

大瀬良亮(以下、大瀬良):まず、ご自身の経歴について教えてください。生まれはフランスでしたよね?何か国語話せるんですか?


ニコラス氏(以下、Nico):フランス人の母とイギリス人の父の間でフランスで生まれました。ドイツ語はネイティブ、母がフランス人ですからフランス語も話しますし、父親がイギリス人ですから英語も。最初に勤めたホテルでハウスキーピングの部署に配属になり、キューバ人の同僚に囲まれて働いていました。スペイン語はそこで身に付けましたね。今は日本語を学んでいますよ。

大瀬良:日本語はまったく違う言語ですよね。大変じゃないですか?

Nico:そうですね。でも、言語を学ぶことで文化についても理解が深まると思っています。最初日本に来たばかりの頃は、タクシーに乗ってもまったく意思疎通ができなくて…


大瀬良:ドイツの学校に通っていたんですっけ?

Nico:ドイツに住んでいた時はドイツの学校に、その後スイスに転校しました。アメリカ・ニューヨークの高校を卒業して、マイアミの大学でホテルマネージメントを専攻して学びました。

大瀬良:ホテルマネージメントを専攻した理由は何ですか?

Nico:子供の頃から20年間、たくさん旅をしてきました。その旅を続けたかった。ホスピタリティー業界はそれを実現するのにぴったりだと思ったんです。新しい国、文化について、従業員同士を通じても発見があります。

大瀬良:学生時代も多く旅されてきたんですか?どこを旅されたのでしょうか?

Nico:ほとんどの時間をアメリカで過ごしましたが、ブラジルや南米エリアはいろいろと足を運びましたね。

大瀬良:卒業後はどんなキャリアを経験されたんですか?


Nico:フランスの会社、ソフィテルに就職しました。16歳からレストランで働いていましたが、これが最初のホテル業界でのキャリアでした。先ほどお伝えしたように、ハウスキーピングの部署への配属でしたね。

大瀬良:働く上で、人生の転機になった出来事はありますか?

Nico:まさにエースホテル京都に来たことですね。想定外の出来事でもありました。
元々、ロサンゼルスのエースホテルGMの募集があり、そこに応募したんです。ある日突然エースホテルから連絡が入り「ビッグニュースがあります!でも、ロサンゼルスではなく、京都です!」と言われました。

ニコラス氏の考える「エースホテル」とは?

大瀬良:エースホテル京都の特徴は何だと思いますか?

Nico:<親しみやすさ>でしょうか。

文化のハブ的な人々をつなぐ存在だと思います。本来はより国際ビジネス的な立ち位置だったのですが、それはパンデミックの前の話ですね。

エースホテル京都は、ギャラリースペースがあり、人々が仕事もできる共有テーブルがあったり、まさにクリエイティブな空間プラットフォームの役割を果たしていると思います。エースホテルニューヨークがそのお手本のような存在です!

私の最初のエースホテル経験はロンドンから始まったのですが、宿泊客以外にも近隣の方など多く人で賑わうロビー。そこで仕事をしたり、おしゃべりしたり。それはもう初めて目にする魅力的な光景でした。

エースホテルでは、宿泊客はもちろん、それ以外の方もとても大切な存在です。人々に気軽に立ち寄ってもらい、館内を散策したり、アートを楽しんだり、コーヒーを飲んだり、ロビーで仕事をしたり。レストランでの食事もぜひ試して欲しいです。人々のコミュニティーこそがまさにエースホテルそのものをつくり出しているんです。

大瀬良:僕自身もポートランドのエースホテルに足を運んだ際に、ホテル内で過ごす人々の光景に驚きと衝撃を受けました。
エースホテルの<親しみやすさ>が日本、京都で成功した秘訣は何でしょうか?

Nico:人々が求めるものを提供する、それだけのことです。そして、自分がされたら嬉しい対応を相手にも行うこと。

エースホテルではホテル経験に問わず、親しみやすい人物かどうかを重要視して採用を行っています。なぜまた同じホテルに泊まりたいと思うか、それは決してインテリアが素敵だからではなく、結局のところスタッフがフレンドリーで親切かどうかではないでしょうか。ゲストとスタッフの間で生まれる会話を通じて、まるで自宅のようにくつろげる。

プロフェッショナルでありながら、フレンドリーなスタッフ育成を目指しています。

<East Meets West>
京都という土地で融合するエースらしい西洋文化とのシナジー

大瀬良:エースホテル京都のコンセプト<East meets West>についてお聞かせいただけますか?

Nico:海外の会社だからこそ、その土地の文化を大切にしたいと思っています。例えば、エースホテルには和食レストランはありません。私たちが西洋のアプローチで挑むのであれば、ベストを尽くして違う文化である和食レストランに力を入れるのは違いますよね?
特に京都のような文化的歴史の深い地域は、文化の融合が大切だと思っています。

大瀬良:多くの外資系企業が同様の東西の融合をコンセプトに掲げていますが、文化のバランスをとるのは、実はとても難しいですよね。

こちらのお部屋(対談部屋:エーススイート)はとても日本的なデザインでありながら、西洋デザインがうまく溶け込んでいる気がします。これはどのように成しえるのでしょうか?

Nico:それはデザイン会社「コミューン・デザイン(Commune Design/以下、コミューン)」のおかげでしょうね。京都はコミューンが手掛ける4つ目のエースホテルでした。

他には、主に日本を中心として集まった20を超えるアーティストとのコラボレーションなども挙げられます。

大瀬良:10あるエースホテルは、それぞれ異なると聞きました。(2022年5月にシドニー開業後は11拠点)

Nico:どのエースホテルも一からデザイン、コンセプトが作られます。DNAは同じですが、どのホテルもデザインやインテリアなど同じものはありません。

日本人の方にはエースホテルニューヨークがよく知られていますが、その印象で京都に足を運ばれるとまったく別物と思われるでしょう!

4月22日はEARTH DAY
流行で終わらせない、GMの立場から考える真の環境配慮とは

©Amy Tang

大瀬良:エースホテル京都のコンセプトやインテリアデザインについて、何か担当された範囲はありますか?

Nico:私が来日したタイミングではすでに建物も建っており、デザインなども先行して進んでいましたね。私自身が注力したのはアメニティー類です。そもそも、最初にアメニティーについての話があったとき、<なぜ客室にアメニティーをセットしなければならないのか?どうしてわざわざ資源を無駄にするんだろう?>と疑問に思いました。現代の私たちは、物を買っては捨てることに慣れすぎている。

もちろん、部屋にはアメニティーは必要でしょう。私は日本のアメニティー文化を否定するために来たのではないんです。ただ、プラスチック以外の素材でなければならないと強く主張しましたね。そこで竹製のアメニティーが誕生しました。

大瀬良:歯ブラシも竹製ですよね!歯磨き粉の代わりの歯磨き粉タブレットは初めてで、驚きました!

Nico:歯磨き粉タブレットは実は不満の声も上がっているんですよね。もちろんゲストの声にも耳を傾け、今後は紙のパッケージに入ったエースブランドの歯磨き粉に置き換える予定です。お客様が少しでも喜んでくれると嬉しいのですが。

ホテルがホスピタリティー業界であるというのであれば、どのようにおもてなしを実行するかは考えなければなりません。

環境に配慮したエコアメニティーについては、多くのコメントを頂戴していますが、それがただの流行でおわって欲しくはありません。実際にトレンドではありますから、多くの場面でエコアメニティーのシェアは広がりつつあります。本当のゴールは、私たち一人ひとりが行動を変えること。そのためにも、お客様には歯ブラシを持参して欲しいと考えています。コスト削減のためではなく、それこそが環境に配慮した正しい行動だと思うのです。

エースホテルのエコアメニティーは、その後も利用していただけます。ぜひ、持ち帰って次の旅でも使っていただきたいです。

大瀬良:僕は自分の歯ブラシを旅の時も持ち歩いています!

Nico:素晴らしい!

大瀬良:日本のホテルは少し過度なおもてなしをしている気がするんですよね。おもてなしというより、もはやお客様の意向に従ってるというか…

Nico:このホテルで、お客様のご機嫌をとるようなことはしたくなかったんですよね。

繰り返しになりますが、私は決して外国人として日本の文化(プラスチックアメニティー文化)を否定しにここに来たわけではありません。ただ、代替案があることを意識の片隅に埋め込めたら、なんて思っています。例えば、買い物の際のマイバッグなど…プラスティックの話題だとずっと語り続けてしまいそうです!

大瀬良:ホテルの次のステップとして地球環境に優しいアクションの予定はありますか?

Nico:4月22日<Earth Day>(地球環境について考える日)にちなんで、4月22日〜24日に<Earth Weekend>の開催を予定しています。さまざまなアーティストのエキシビジョンの開催や、これを期にプラスチックのルームキーも竹製の新しいものに置き換える予定です。

旅を好むGMが日本で発見したホテルたち

大瀬良:普段お仕事以外では何をされているんですか?


Nico:本を読んだり、ハイキングをしたり、健康に気を使ったり、レコード集めなどが趣味ですね。

大瀬良:多趣味ですね!

Nico:自分を成長させることは大切だと思うので、なるべく多くの趣味を持つようにしています。パンデミックで旅行はあまり行けなくなってしまいましたが…

大瀬良:日本を旅して気に入ったホテルなどはありました?

Nico:UDSグループ施設は好きですね。「ホテル カンラ京都」はとても素敵な施設でした。京都駅の南にある「ホテル アンテルーム 京都」とも全く異なるコンセプトや細かな気配りなど素晴らしく、とても楽しめました。

大瀬良:UDSグループはHafHにとってキーパートナーでもあります。他にもどこかありますか?

Nico:広島尾道「U2」での滞在は印象的でした。あとは、瀬戸内の船に滞在できる「guntû」は高いですが、いいですね。日本国内について、まだまだ印象深い個性的なホテルの誕生チャンスはたくさんあると思います。

京都にも多くのラグジュアリー外資系ホテルがありますが、個性的なクリエイティブなホテルなどいいですね。

ACE✖️HafHキーワードは「多様性」

大瀬良:旅行者にとって、日本の文化体験ができる地方(尾道など)へのアクセスが便利な京都や大阪は、東京よりも人気のある旅先になりつつあるのではないでしょうか。HafHはそういった地域の発見や旅を、サブスクリプションサービスを通じて手助けしたいと考えています。地方都市は、大都市と比べると宿泊先を探すのも大変ですよね。

今後は日本のマーケットに限らず、海外も視野に入れ、国籍やルールを取り払った新しい世界を作ろうとしているのですが、これはエースホテルブランドの<多様性>と親和性のある部分かなと思うのですが。

Nico:そうですね!

大瀬良:しかし、日本ではまだ、違いや変化に対する抵抗感が取り払われていないような気がします。街中ですれ違う人に対して「外国人だ」と反応している中で、どうすれば理想の未来を作り上げられるでしょうか。


Nico:教育からですかね。いろいろなバックグラウンドを持った人々が集い、繋がり、互いを理解する。そこから多様な物差しを得ることではないでしょうか。

エースもHafHもそれぞれができることをやっていく。多様性というキーワードをもとに、小さなステップからお互い頑張りましょう!

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エースホテル京都
京都府京都市中京区車屋町245-2 新風館内
1000〜1600コイン|定員1〜2名
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前編ではエースホテル京都の魅力をご紹介。

魅力の紹介記事についてはこちらから
前編:宿泊前に必見!エースホテル京都を楽しむために知っておきたいこだわり

取材・文・写真 = Michelle

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